京都地方裁判所 昭和26年(行モ)1号 決定 1952年3月11日
京都市東山区泉涌寺山内町二十五番地の九
申請人
坂田行平
右代理人弁護士
浅井精三
同
市下京区間之町通五条下る
被申請人
下京税務署長
二位泰
右代理人大蔵事務官
村上正男
同
葛野俊一
同
高田実夫
右当事者間の昭和二六年(行モ)第一号公売処分執行停止申立事件について被申請人の意見をきいた上次の通り決定する。
主文
本件申請を却下する。
理由
申請代理人は「被申請人が昭和二十六年七月四日訴外古川治郎に対する滞納処分として別紙目録第一並びに第二記載の物件に対しなした差押処分は本案判決言渡に至るまでその執行を停止する」との決定を求め、その理由とするところは「申請人は昭和二十五年三月二日申請外古川治郎から同人が申請人に対し負担する債務の代物弁済として別紙目録第二記載の物件の讓渡をうけ、同年六月二十二日右古川治郎に対する財産税滞納処分としてなされた公売に際し別紙目録第一記載の物件を買受けていずれもその所有権を取得した。
而して申請人は右古川治郎の懇請を容れ右別紙目録第一並びに第二記載の物件を同人に無償で使用させていたところ、同二十六年七月四日被申請人は古川治郎に対する財産税滞納処分として該物件を差押えた。然し右物件はすべて申請人の所有に属するものであるから古川治郎に対する滞納処分のために差押をうける理由がない。そこで申請人は京都地方裁判所に右差押処分の取消を求める訴を提起し現に係争中であるが、以上の経緯によつて明かなように本件差押処分は先の公売に際して申請人が買得した物件を再び差押える等無軌道なものであつて被申請人は敢て公売処分を強行しその結果申請人は本件物件の所有権を喪失しいわれなく損害を被るおそれがある。これ即ち償うことのできない損害であつてこれを避ける緊急の必要があるから本件差押処分の執行停止を求める」というにあるが、申請人主張のように単に現在の差押処分を更に公売処分に進行せしめ以て申請人所有に属する別紙目録第一並びに第二記載の物件の所有権を喪失させるおそれがあるというだけでは処分の執行によつて償うことのできない損害を生ずる場合に該当しないから主文の通り決定する。
昭和二十七年三月二十九日
(裁判長裁判官 山口友吉 裁判官 山田常雄 裁判官 吉井参也)
物件目録第一
一 電気ストーブ 壱個
二 人形ケース 壱個
三 書籍箱(在中書類共) 壱個
四 大火鉢 壱個
五 仙徳火鉢 壱個
六 掛軸 壱個
七 シツポク台 壱個
八 置時計 壱個
九 机 壱個
一〇 事務机 壱個
一一 小屏風 壱個
物件目録第二
一 花瓶 壱個
二 掛額 壱個
三 洋タンス 弐個
四 電蓄(八球) 壱個
五 冬オーバー 参枚
六 合オーバー 弐枚
七 トンビ 壱枚
八 背広服 壱着
九 背広上衣 六着 以上